裸足ランニング・ベアフットランニングの実践記録

裸足ランニング

42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」

投稿日:2013年2月25日 更新日:

『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』レビュー

2013年2月8日金曜日。夕方。某大書店で。

帯にデカデカと書かれた「なぜ『つま先着地』が重要か?」の文字が目に入り、さらにその下の「マラソン歴代上位100傑のうち9割がケニア・エチオピア勢 彼らの強さの真相に迫る! ミラクルボディー NHKスペシャル」という文に「これだっ!」と『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』を即買い。著者は、NHKスペシャル取材班。

現在(『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』が書かれた時点で)、マラソンで3人しかいない2時間3分台で走るトップアスリートたちを科学的に分析した2012年7月16日放送NHKスペシャル「ミラクルボディー第3回 マラソン最強軍団 持久力の限界に挑む」を元に、番組内で紹介できなかった逸話やデータを盛り込んでいる。新書なので、どこでもいつでもさっと読める。その割に濃い内容。4章仕立て。

『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』は、マラソン42.195kmを2時間3分台で走るゲブレシラシエやパトリック・マカウのランニングフォームだけでなく、トップアスリートのモチベーションの保ち方、トレーニング法、レースでの駆け引きの仕方……といった多くの知見を学べてお得だった。

残念なのは、(分解)写真や図がないこと。フォームについては動画が観たくなる。

読んでいて思ったこと。本書中の「つま先着地」を「前足部(フォアフット)着地」と読み替えるといいと思う。

裸足嗜好のランナーや、これから裸足ランニングに取り組みたいランナーは、第1章「マラソンを高速化させた肉体の秘密」と、第2章「究極の“省エネルギー走法”」を必読。

2種類の前足部(フォアフット)着地

裸足(ソックス)ランナーとして、いちばん参考になった部分は、2種類の前足部着地というか、足の使い方の違い。

今までは、普通のランにングシューズを履いてのランニングフォーム対裸足のランニングフォームという構図だった。しかし、本書から、同じアフリカ出身でも、ゲブレシラシエとパトリック・マカウの足の使い方が違うという分析が興味深かった。

詳細は本書を読んでいただくとして、興味深い点を挙げる。

ゲブレシラシエは太くて硬いアキレス腱に物を言わせて跳ぶように走る。アキレス腱が弱い日本人には真似できない。

一方、パトリック・マカウは、日本人と似ている細くて柔らかいアキレス腱で、前足部から柔らかく着地し、最小限の力で蹴り出す“省エネ走法”だという。

なので、もし私たち日本人が裸足ランニングのモデリング(お手本、参考)にするなら、パトリック・マカウのランニングフォームを研究するといいだろう、と察しがつく。

着地時の衝撃力については、パトリック・マカウが体重の1.6倍、日本のロンドンオリンピック代表で踵着地の山本亮が体重の2.2倍、一般的には体重の3倍以上になるランナーもいるそうだ。なので、適切な裸足ランニングのフォームで鍛えれば、着地時の衝撃を減らせる、ということになる。

トップアスリートもオーバートレーニングには勝てない

ゲブレシラシエは、そのランニングフォームからきたであろうと推測される長年の負担で、体にガタがきた。

パトリック・マカウは、直前のトレーニングのやり過ぎで、ロンドンマラソンを棄権した。

「裸足ランニングなら怪我しない」と喧伝されているが、なんでもやり込みすぎは禁物、ということを教えてくれる。

ベテランランナーがある日突然、裸足感覚シューズを履いてランニングして、脚を故障するというのも、ゲブレシラシエと同じようなフォームで、自分の分もわきまえないでぶっ飛ばして走るからだと思われる。

キーポイントは裸足ランニング

どうしたら適切な裸足(感覚)ランニングのフォームを身につけられるのか?

ケニアのリフトバレー州で、10年以上に渡ってその地域出身者の走力の強さを調査しているグラスゴー大学のヤニス・ピツィラディス博士はこう語っている。

つま先から着地すると衝撃が小さいという事実は、怪我のリスクを軽減するのに役立ちます。ですから裸足で走ることが重要なのではなく、裸足での走り方、すなわち“つま先着地”あるいは足底の中心部での着地が、怪我を減らすという観点から重要なのだと考えられます。121〜122p

パトリック・マカウはこう語っている。

私はつねに状態の良くない靴を履いて走っていました。しかも、私たちが走る場所は、路面の悪いでこぼこ道が多く、そうした厳しい状況下で走る時には、着地の時に痛みを感じました。頻繁に怪我もしました。そこで“柔らかい着地”を心がけることで、痛みを避けることが身につき、疲れずに長い距離を走れるようになった。125~126p

つまり、裸足で走ること。これに尽きるのではないだろうか。

もちろん、ボーッと裸足で走って距離を稼げばいいということではない。

マカウのように、少しでも柔らかい着地になるように自分の頭で考え、体で感じ、工夫しながら、時間を掛けて走って探求すること。

最後に

私にとって『42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」』は、これまで試行錯誤してきた方向性を再確認させてくれた。 これから裸足ランナーを目指す人にも、よりよい裸足ランニングを追求するランナーにもよいインスピレーションを与えてくれるだろう。

これから裸足ランニング、ソックスランニングを始めるランナーに私が薦める教科書

  

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