『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』(みやすのんき、実業之日本社、初版第1刷)はまさしく大転子ランニングを体験するための本だった。幸運にも発売日前日2017年1月27日金曜日に新宿の大手書店で入手できてラッキーだった。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』概要
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』は、衝撃的な「まえがきにかえて 2015年シーズンから2016年シーズンにかけての意地と維持の戦い〜前編〜」から始まった。
当初2016年秋前に出版予定だったはずがサブスリーを達成できず……って大丈夫か? まえがきのストーリーからドキドキ。もし2016年春にサブ3になっていたとしたら2016年9月には大転子ランニングと出会えてたらしい。
その続きは前作『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』の理論を深化・補強もある第1章「間違いだらけのランニング常識に『喝!』」─股関節(大転子)、腕振り、体幹トレーニング、呼吸等の項目がある─を跨いで第2章「2015年シーズンから2016年シーズンにかけての意地と維持の戦い〜後編〜」で読める。
そしてお楽しみの第3章「大転子ランニングのススメ」で大転子ランニングと初心者レベルからのトレーニング法、シューズ選びを学ぶ。
最後は第4章「糖質? 脂質? ケトン体? 悩めるランナーのダイエット」で10種類のダイエットを俎上に上げて持論を展開。さらにレース前、当日、レース中のエネルギー補給について実体験を元に読者にヒントを挙げている。
締めの「あとがきにかえて 素質を決めることは自分の心の限界値を決めること」で"一万時間の法則"、"限界的練習"で著名なアンダース・エリクソン教授(『超一流になるのは才能か努力か?』文藝春秋社刊)を引きながらマラソン大会で自己記録更新に挑む読者へエールを送っている。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』の偉大な功績とは?
『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』を読みこなすで「一軸と二軸の統合」と指摘したことが『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』でもう一歩前進していて驚いた。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』の功績とは、これまで一軸との対比で語られてきた"二軸"と称されてきた運動形式を普遍的な運動形式として格上げしたことだ。
「第1章 間違いだらけのランニング意識に『喝!』」でそもそも「体を捻る」"一軸"という運動形式はないと指摘。『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』30ページでこうバッサリ斬っている。
体幹というか胴体、背骨をねじって、それを起動力として動くスポーツは存在しません。
野球の投球フォームの例が挙げられている。ランニングも然り。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』のこの考察だけでも「もっと効率的に体を有効利用できるのか」と目から鱗が落ちたランナーが数多くいると思う。
もう1つ。
「大転子ランニング」と言うベタな名称を用いること。学習者がよく習得していれば「大転子」がトリガー(引き金)になって大転子ランニングに関わる良いランニングイメージ(数々の特徴)をアンカー(錨)として一気に意識に上りやすくしている。例えばランニングフォームが崩れた時に「大転子」と言う言葉を思い出すだけでランニングフォームを元に戻しやすくなるてことだ。これって便利。こういったノウハウを使いこなすには少しばかりメンタル面でのトレーニングが必要かもしれないが。
大転子ランニング体験その前に
帯に書いている「早く楽に走るには骨盤の動きを理解せよ! 鍵は大転子だった!」の要点を受けて第3章「大転子ランニングのススメ」で大転子ランニング習得の道筋を開陳している。
その前に読み逃せないのがまえがきにかえてと第2章に渡る「2015年シーズンから2016年シーズンにかけての意地と維持の戦い」前後編のストーリーと「あとがきにかえて」。
自己記録更新が目標なら効率的な大転子ランニングのフォームを習得しさえすればお気楽で自己記録更新できちゃうとか最低限のトレーニングで良いとかケアしなくて良いとかじゃなくて─併せて前著『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』も読んだならさらに─、有効利用するための地道なトレーニングと入念なケアが必須だよと読者に教えてくれている。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』体験覚え書き
あらかじめ断っておくが『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』体験といってもサブスリーを体験したわけじゃないから。『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』から大転子ランニングのエッセンスを体験したということだぜ。
大転子ランニング習得については読者各自『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』を何度も熟読⇄試走で楽しんで欲しい。
ここでは大転子ランニングについて体験を踏まえて所感を述べる。理由を書き出すとさらに長くなるのでここでは割愛する。
個人的な習得歴。『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』を2016年11月の発売日に買ったその日から大転子ウォーキングで体を慣らしつつ『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』発売前から独自に推論しながら自分のランニングに組み込んだ。この部分は以前二軸理論を実践していたことが功を奏した。2017年1月末『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』発売後に内容と自分のランニングフォームを擦り合わせしてさらに改善しながら自分のものにして今に至る。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』読解については、『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』と『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』を適宜参照しながら推測した。
学習のために自分の得意なペースのランニングでも敢えて前傾しないでスローシザースの姿勢で走っている(2017年2月19日現在)。
大転子ランニング習得に当たって、みやすのんきさんも『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』で強調しているように、まずしっかり大転子ウォーキング(参考書『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』)を習慣化してから─通常3ヶ月くらいかかるだろう─大転子ランニングに移行する方が望ましい。その方が大転子感覚を養える。
理論的には『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』→『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』の順番。
ランニングのトレーニング法として学習する場合は『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』→『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』の順番。
それでは大転子ランニング体験した覚え書きいってみよ〜。
前腕を抱え込みを体得する際にダンベルを用いているが、ダンベルがなくてもできる。要は角度と慣れ(習慣)。巷では伸筋感覚ってこと。これだと握り込みの変な癖がつかないし、力まなくて済む。
「トラクション」という用語が68ページと141ページで唐突に出てきて戸惑った。本文にもないし、注釈にもなかったから。そこでツイッターでみやすのんきさんに聞いてみたので分からなかった読者は下記参考にしてほしい。
本書では「足が地面に接して前に進ませる力=駆動力」です。着地は左右の足裏の点ですが、多くの人は後ろに流れる「線」として捉えています。そこでトラクションと表現してみました(^^)。F1やバイクのレースではよく使われる用語です。
— みやすのんき (@MiyasuNonki) February 12, 2017
大転子ウォーキングまたはケンケンによる感覚を充分習得してからスローシザースに挑戦すると良い。
スローシザース習得前にA図またはB図で横から見た姿勢─所謂"良い姿勢”。但し脱力していること─ができてると『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』に書いてある状態を感得しやすい。猫背のランナーにはこの姿勢が一番高いハードルかもしれない。
スローシザースのA図とB図で胸郭の位置と骨盤の位置を確認。分からない場合は『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』の図で確認。
なお『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』45pの図はちょっと違うのでスルーすると良い。
ちょっと頭の位置が支持脚側に寄って書いてしまっているので、理想的な大転子ウォーキングの動きとは違ってます。これも骨盤の動きに注力したのでやや上体の角度等が曖昧ですね。頭と左右の肩の位置はなるべく水平がよいと思います。すみません(;^_^A
— みやすのんき (@MiyasuNonki) December 13, 2016
スローシザースA図から「左側の骨盤から前に出る感じです。同時に左の肩甲骨が前に向かう
」(『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』146p)という場面がガチ走りバージョンではどの場面(≒タイミング)に相当するか確認しておく。スローシザースからペースアップして自分のランニングペースで走る時の参考になる。131pの図も参考に。
スローシザースで「ポン」と着地している刹那に両足が浮いている時間があり、切り返しになることを味わう。
スローシザースから自分のペースで走る時にみやすのんきさんの下記ツイートも参考になる。「空中で」の感覚が基本。これって実はスプリント走の基本だから知ってないと恥ずかしい部類に入る知識だったりする。だからスローシザースで徹底的にこの感覚を覚える。読んでくれている読者に出血大サービスしちゃうと、意味を理解してちゃんとできてれば大転子ウォーキング─早歩き─でもこの感覚を養える。
足で蹴ってから骨盤が動くのでは確実に遅くなります。確かに今までの常識からは受け入れ難いですよね。とはいえトライ&エラーはするべきですので、ご自分の信じる走り方をされるのが一番かと思います。私の言いたい事は本に書いておりますので議論はしません。4時間切り頑張って下さいね(^^)
— みやすのんき (@MiyasuNonki) February 12, 2017
シザースひとつ取っても、必ず着地してからじゃないと膝を振り上げられない人が一定量いるのです。その方たちからすると「あのマンガ家、滅茶苦茶なこと言ってる」という話になります。まぁ、しょうがないですね(´ー`A;)。
— みやすのんき (@MiyasuNonki) February 12, 2017
スローシザースで走っている時も大転子からの起動を意識する。先に大転子から起動した場合と、大腿から起動した場合の違いを味わっておくと差がわかりやすい。大転子ウォーキングでも同じ。
「大転子ランニング ガチ走りバージョン」170〜179pでいう「ガチ走り」とは、「キロ4分30秒より速く走るときのイメージ
」(『走れ! マンガ家ひぃこらサブスリー 運動オンチで85kg 52歳フルマラソン挑戦記!』90p)と考えるのが妥当。だからそれより遅いランニングの場合は形だけ真似しても無駄。
スローシザースからペースアップして自分のランニングペースで走る時もフォームを崩さない身体感覚、大転子感覚で走る。それと速く走ろうとすればするほど力んでくる場合が多いから、少しずつ速く、力を抜いて走る。当然習得にはそれ相応の期間が必要。
……という感じかな。
読者として一番重要であり一番難しいことは『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』に書いてあることをよりよく解釈して自分の体に感覚として入れること。
それには『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』で言葉で表されない感覚の推測能力や書かれていない他の知識が必要かもしれない。
自分自身に適用してみた今の所─2017年2月17日─の結論。目立った3点を挙げる。
- より軽く走れるようになった。
- 左臀部の痛みが出にくくなった。
- 臀部の意識が強くなって姿勢と動作の関係性の理解が深化した。
大転子ランニングをしたら特定部位に痛みが出るようになったというランナーもいるだろう。
そういった場合、角度に起因すると思われる。それが自然に補正されてしまうのか、意識的に補正していけばいいのか、どちらがよりよいか分からない。両者が適度に混じり合っているようだ、と自分で実践していて思う。
ただ1つ言えるのは大転子ランニングを活用したフォーム作りの過程で、自分自身で細かい部分を修正し続けることが大事。
現在の目標はタイム更新ではなく「フルマラソンを楽に走れること」。その目標に合致していることはなんでも試したい。姿勢然り、ランニングフォーム然り、マラソントレーニング然り。
ランニングフォームに関しては目処が立った感じ。これからはそもそも長距離の素養がない自分に適合したマラソントレーニングを探求したい。
結論として『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』はお勧めなのか?
もし「これからランニングしたい」とか「もっと効率的な体の使い方を知って自己更新に挑戦したい」と聴かれたら、どちらのランナーにも『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』をお勧めする。
逆に言うと他書は勧めない(2017年2月20日現在)。
併せて『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』もセットでお勧めする。
そう勧める3つの理由を挙げる。
- 日常移動で一番体を使うウォーキングがランニングのトレーニングの一部になる
- ウォーキングからランニング、ランニングからウォーキングへの移行がシームレスにできるようになって一石二鳥になる
- 何らかの理由でランニングできない状況でも大概ウォーキングはできる状況が多いから
少なくとも自分自身、大転子ウォーキングと大転子ランニングのお陰で過去にやってきたランニングフォーム研究の知識と知恵すべてが統合されてより良い自分自身のランニングフォームへ移行して自分が目指すノーモーション・ランニング確立に目処が立ったことに感謝している。
『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』に書かれていることがすべてではないし、いくら細かく書いても書ききれない事柄もある。
敢えて『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』で残念な点を挙げるとすれば『あなたの歩き方が劇的に変わる! 驚異の大転子ウォーキング』並みの解説を期待していたがそうではなかったこと。
まあ、いくら書いても本そのものが読者の解読力に負う所が多いし、解釈も得られる感覚も読者によって違うからなぁ。
それでも多くのランナーに『「大転子ランニング」で走れ!マンガ家53歳でもサブスリー』を勧めたい。
滅多にないほどよく書けているし理解しやすいランニング本だから。
みやすのんきさん、次はどこに向かって走るのか? みやすのんきさんのランニング本第3弾を期待しながら俺も走り続ける。もちろん裸足でな。
ああ。それと、またこの続きを書くかもしれない。
『「大転子ランニング」で走れ! マンガ家 53歳でもサブスリー』Amazon